メインコンテンツにスキップ

2026.05.29更新 労働安全・保安防災

安全に関する考え方

 クラレグループの事業活動において、「安全」はすべての礎となる絶対条件です。「安心して働ける会社、事故や災害が起こらない安全な会社」の実現は、製品の安定供給を維持するためにも、社会から信頼され続けるためにも必要な重要テーマといえます。
 そうした考えのもと、クラレグループは安全のマネジメントシステムを構築・運用するとともに、社員の安全意識を高め、安全行動と安全確認が仕事をする上での「当たり前」のこととして定着するために、さまざまな取り組みを推進しています。
 各現場では、リスクアセスメント活動を通して保安防災・労働安全リスクを発見し、設備の本質的な安全対策を進め、その発生防止を図っています。また万が一、事故・災害が発生した場合に備え、被害を最小限に抑えるための訓練、事故の事例、教訓等の情報共有や対策の水平展開などを行っています。

安全に関する行動原則

『安全はすべての礎』

安全に関する行動方針(2026年度)

  1. 「安全第一、生産(工事、開発)第二」を実践すること
  2. 行動前の「危険予知」と行動前後の「確認」を実践すること
  3. すべての人、すべての職場で安全を「自分事」として意識し、行動すること

安全活動マネジメント

  「安全活動マネジメント規則」に基づき、年度ごとに計画を立て、安全活動に取り組んでいます。社長および担当役員が出席する安全推進会議で、当年度の安全活動実績の総括評価と次年度の活動方針策定を行い、その方針を各事業所・部署の活動計画に反映させ、実行しています。活動の状況については、安全担当役員を含む本社安全スタッフが国内グループの各生産事業所の現場を年2回視察して検証を行い、海外グループでは3年に1回を目途に本社安全スタッフが現地を訪問して確認を行うとともに、リモート会議による検証を行っています。現場での検証から得られた課題やその年の安全成績などをもとに実績の総括評価を行い、翌年の全社の方針策定に反映させて安全活動のマネジメントシステムを回しています。

安全活動の検証の様子(新潟事業所)
安全活動の検証の様子(西条事業所)

保安防災・労働安全の活動

2025年度重点活動結果

項目結果
安全の基本行動(「危険予知」、「確認」)の現場での実践「危険予知」と「確認」の浸透、定着を図った結果、一定の効果が得られていると考えている。しかしながら、現場での実践の度合いに差があり、安全に関するルールの遵守や基本行動の実践が不十分なために事故・災害に至った事例が依然として発生している。今後も、全員があらゆる場面でルールを遵守し、基本行動が実践できるようにすることを目指した継続的な取り組みが必要。
現場のリスク(労働安全、保安防災)の把握、設備面・管理面からの対策検討5Sや現場で発見した「気づき」の共有、作業標準書見直しなどの活動により、現場のリスク発掘と発見したリスクの改善が進んだ。しかし、風景化、常態化したリスクがまだ残っている。「そんなことはしない、起こらない」との思い込みから、リスク検討の対象から漏れ、人の注意力や技量に頼った安全対策になっている部分がまだあり事故・災害に至っている。今後も現場に潜む重大リスクの把握と設備面及び管理面からの安全対策が必要。
工事・保全作業の安全確保安全な工事・保全作業を行うためのシステムや規定の見直しと教育、特に、安全な場を提供するための事前の安全措置、現場・現物による三者立会い確認、適切な情報伝達などの実施が進み、安全な場の提供が不十分なために工事作業者が被災する事例は前年に引き続き発生しなかった。今後も安全確保のためのルールが現場で確実に運用され、実践が継続できるように維持していく。
海外化学プラントの保安管理レベルの向上2019年から開始した海外化学プラントに対する安全監査を継続して行った。
2023年に導入した安全方針説明会議、事故報告会などの仕組みの継続的な運用により、海外グループとのコミュニケーション向上を進めた。
組織横断的なメンバーで構成されたPSM(プロセス・セーフティ・マネジメント)のグローバル専門家チームによる海外化学プラントの保安管理の実施状況についての現地監査を前年に引き続き行い、いくつかの課題を抽出して対応を進めている。
今後も引き続き保安管理体制の現状確認と課題の把握を進めて保安管理レベルの向上を図る。

2026年度重点活動計画

 

国内

  • 安全の基本行動(「危険予知」、「確認」)の現場での実践、安全の基本ルールの遵守
  • 事故・災害事例の活用
  • 生産部署等が自ら行う整備・復旧作業等における安全確保
  • 業務委託作業等における安全確保
  • 職場の安全意識を高めるためのコミュニケーションの強化

 

海外

  • 労働災害の低減
  • 保安管理体制の強化
  • グローバルな安全活動の一体運営

新規事業、設備投資案件等におけるリスク評価

 クラレグループでは、国内外の新規プロジェクトや設備投資について、「技術評価委員会」「技術検討会」「安全・環境審査」でプロセスの安全や労働安全衛生に係る事前の調査やリスクアセスメントを実施し、安全対策・環境対策が十分に検討されているかを確認した上で、次ステップに進む体制を構築し運用しています。また、原材料や設備・運転条件・組織の変更、組織の変更に伴う人の異動(責任者、管理者、担当者等)などが生じた場合には「変更管理」の一環としてリスクアセスメントを行い、必要な対応をとった上で変更を実施しています。これらの取り組みを確実に運用することで新規事業、設備を導入する際の安全確保を図っています。

海外化学プラントに対する安全監査

 海外グループの安全と安定操業を確実なものとするため、2019年から海外化学プラントに対する安全監査を継続しており、保安リスクの把握と安全対策の見直し・強化に取り組んでいます。2025年は、米国の4工場とアジアの2工場に対して、現地訪問による安全監査を実施しました。これまでに抽出された課題への対応状況のフォローを行うとともに、保安事故・トラブルの原因究明と対策の進捗状況について確認し、現場の安全レベル向上を図っています。また、2022年にPSM(プロセス・セーフティ・マネジメント)のグローバルな社内専門家チームを編成し活動を開始しました。2025年は米国2工場と欧州2工場の保安管理の実施状況について現地監査を行い、検出された課題への対応を進めています。今後もこの専門家チームによる監査を継続し、海外化学プラントにおける保安管理体制の現状確認と課題の把握を進めて保安管理レベルの向上を図っていきます。

労働安全

 クラレグループでは、従業員の安全と健康の確保に向け 、労働安全マネジメントシステムの適切な運用を通じて、組織および社員一人ひとりの安全レベルの向上に努め、安全で災害のない職場を目指しています。安全に関する行動原則、行動方針をはじめとする全社の方針や活動項目などを基にして、各事業所・部署の特徴に合わせた方針・計画を立て、これに沿って各部署が工夫を凝らした活動を行っています。安全活動の状況やその課題については国内の各事業所・工場等で毎月開催される安全衛生委員会の中で労使一体となって討議し、「安心して働ける会社、事故や災害が起こらない安全な会社」の実現に向けて取り組んでいます。
 リスクアセスメント活動や設備の本質的な安全対策を通して、設備の不備による災害を減らす活動を継続的に進めています。しかし、個人の不用意、無意識の行動に起因する労働災害はまだ多く発生しています。このような災害を無くすため従業員一人ひとりの危険への感度を高める教育を推進しています。

【2025年実績】

 2025年のグループ全体の全労働災害度数率は、2.63(国内グループ1.03、海外グループ5.28)となり、目標(1.8以下)未達となりました。国内グループは目標(0.6以下)未達でしたが、前年よりやや良化しました。海外グループは対前年で大きく悪化し、目標(3.2以下)未達でした。当社では、労働災害の深刻度をA~Dの4段階で評価する独自の指標を導入しており、より深刻な労災にあたるA、Bランクの発生ゼロを目標にしています。2025年のA、Bランク労働災害(重大労働災害)は、グループ全体で合計6件(国内:Aランク1件、Bランク2件、海外:Aランク1件、Bランク2件)発生し、目標未達となりました。発生したA、Bランク労働災害は設備への挟まれ・巻き込まれが3件、高温物等との接触が2件、および運転中のフォークリフトからの転落によるものが1件でした。これらは人の注意力や技量に頼った安全対策になっていたことやリスクを見逃していたことなどに起因しており、その対応を進めています。合わせて、2024年に発生した死亡労働災害で見出された課題に対する取り組みも確実に進め、今後も安全で災害のない職場を目指して取り組んでいきます。

グラフ:全労働災害度数率の推移
グラフ:労働災害評価ランクに基づく労働災害件数の推移

労働災害評価

 労働災害の分類の指標として、一般的には傷害の程度による分類(死亡災害、休業災害、不休業災害等)が用いられています。その中でも休業災害を基にした度数率が組織の安全レベルの評価や組織の安全の目標としてよく用いられます。しかし、この評価方法では、以下のような点から実際の安全レベルと乖離する場合があるのが実状です。

① 傷害の程度は「偶然」に左右されやすい。
② 災害の発生要因が考慮されない。
③ (グローバルな管理に使用する場合)国により傷害程度の判断が異なる。

 そこで、2012年に当社独自の指標として、「偶然」の要素を除き、発生要因の評価を加えた新しい労働災害評価ランクを設定しました。実際に起きた傷害程度ではなく、労災が発生した事象に対して、それにより潜在的に起こり得る傷害程度を数値化します。さらに、災害発生要因の不具合の度合いを、人的、設備的、管理的要因に分けて点数化し、潜在的な傷害程度に加えることにより、A、B、C、Dの4段階にランク付けしています。
 その結果、深刻と判断されるAランクとBランクの労働災害の発生件数を、その組織の安全レベルを評価する指標として利用可能になりました。

保安防災

 クラレグループでは、社会に対して甚大な影響を与える爆発、火災、有害物質の漏洩などの事故の未然防止を図ること、そして万が一事故が発生した際の被害を極小化することを重要な責任と考えています。そのため、保安防災に関するリスクアセスメントに継続的に取り組み、建築物・プラントの地震対策や津波対策、設備の保安管理システムの整備などの保安防災活動を推進しています。
 特に、2010年代に発生した他社の事故を契機として、運転立上げや停止、停電、断水、緊急停止といった非定常時のリスクアセスメントに注力しています。さらに、安全装置が故障した場合、標準の手順やルールが守られない場合なども対象として、さまざまなリスクを抽出し、その対応策の検討を進めています。
 合わせて、異常の兆候検知のための危険感受性向上の教育や異常の判断基準の明確化にも取り組み、異常に対して迅速に対応し、事故に至る前に対処できる設備、管理の工夫や人材の育成に取り組んでいます 。

 また、万が一に備え、夜間休日、職場長の不在などを想定した訓練、事前通知無しでの訓練、外部の施設を利用した訓練、地域消防との共同訓練など、緊急時に対するさまざまな現場訓練を定期的に実施しています。外部機関による安全基盤と安全文化の評価にも取り組んでおり、より強化すべきポイントを把握してPDCAを回すことで、事故や災害の起こらない安全な会社を目指していきます
 重大な事故が発生した場合には、社長を本部長とする緊急対策本部を設け、速やかな対処・現場への支援ができる体制も整えています。事故の際、地域・マスコミに適切な情報を提供できるよう、対外的な広報の場に立つ主要管理者を対象にメディアトレーニングも行なっています。

【2025年実績】

 2025年のグループ全体のA、B、Cランク保安事故・保安トラブル件数(比較的大きな保安事故およびトラブルの件数:当社独自の評価法)は、12件(国内グループ:Aランク漏洩2件、火災1件と小爆発1件、Cランク漏洩2件と圧力上昇による設備破損1件、海外グループ:Aランク火災1件、Bランク漏洩1件、Cランク漏洩1件と火災2件)となり、前年(17件)と比べて減少しましたが、目標(0件)未達となりました。2025年のグループ全体のD1、D2ランク事故件数(ごく少量の危険物漏洩、初期消火で鎮火した火災・発火といった軽度の保安事故件数:当社独自の評価法)は、14件(国内グループ:D1ランク漏洩9件、D2ランク漏洩5件、海外グループ:なし)となり、前年(21件)に比べて減少しましたが、目標(3件以下)未達でした。発生要因としては昨年同様バルブの閉止忘れなど操作前後の確認不足による事故や、現場リスクの風景化・常態化によるリスクの見逃し、設備の経年劣化によるものなどが見られ、引き続きその対応を図っています。今後も比較的大きな保安事故・トラブルゼロを目指すとともに、軽度な事案の発生低減を目指し、現場のリスク把握と対策を推進していきます。

 クラレグループでは、これまでの保安防災に関する目標としてきたA、B、Cランク保安事故0件に、2025年からA、B、Cランクの保安トラブル0件も目標に加え、クラレグループ全体の保安事故および保安トラブルの低減に向けて取り組みを進めています。

グラフ:保安事故・トラブル数(ABCランク、D1D2ランク)

 2019年から開始した海外化学プラントに対する安全監査を継続するとともに、2022年にはPSM(プロセス・セーフティ・マネジメント)のグローバル専門家チームを新たに編成し、活動を開始しました。この専門家チームは組織横断的なメンバーによる課題の抽出・把握、改善に向けた知見の情報共有、クラレグループ全体への水平展開を目的としています。2025 年は米国の2拠点と欧州2拠点の保安管理の実施状況について現地監査を行い、いくつかの課題が抽出され、それぞれ対応を進めています。今後も海外化学プラントの事故の再発防止の徹底を図るとともに、PSM監査を継続し、監査などによって明らかになった課題について対応を進めて保安管理レベルの向上を図っていきます。

米国工場火災事故に関する検証と対策について

  クラレグループは2018年に米国グループ会社の工場で発生した火災事故についての検証結果を2023年12月に報告しました。技術、ガバナンス、訴訟対応の3つの観点から検証し、それぞれに取りまとめた再発防止策の着実な実施を進めています。さらに、これらの検証結果と再発防止策を踏まえたグループ全体の対策をまとめ、安全活動現場検証などの活動を通じてグループ全体に水平展開しています。この検証結果とその対策に基づいた取り組みを国内および海外グループで展開し、クラレグループ全体の安全管理体制およびリスク管理体制のさらなる強化を目指しています。

クラレ独自の保安事故・トラブル評価法について

 これまでクラレグループでは保安事故(火災、爆発、漏洩等の保安に係る事案のうち監督官庁への報告が必要なもの)について、事故の程度の大小を区別せず発生件数で保安成績の評価を行い、目標設定を行ってきました。しかしながら、この方法ではリスクに応じた適切な目標設定が行われているとはいえない状況でした。そこで、保安事故の大小による分類を行い評価指標に組み入れようとしましたが、一般に知られている分類法(CCPS法など)では、クラレグループで発生している保安事故のほとんどが最小ランクに分類されることになり、我々の目的に合致するものではありませんでした。そこで、2020年に当社独自の評価法を構築しました。この評価法は、事故の種類(火災、爆発、漏洩等)ごとに事故の規模を分類し、また人的被害の有無、事故の発生に至った要因などを加味してランクを決定するもので、CCPS分類の最小ランクの災害もさらに分類、区分できるものとしました。これにより、A、B、Cランクに分類される大きな事故は“決して起こしてはならない事故”として発生ゼロを目指すとともに、D1、D2ランクに分類される小さな事故(危険物の微少漏洩、初期消火で鎮火した火災・発火等)については、“発生の頻度を低減する事故”としてそれぞれの目標を設定することで、リスクに応じた適切な保安リスク低減活動に役立てます。2021年からこの評価法に基づいた保安防災の年度目標を設定し、活動に取り組んでいます。また、保安事故の基準を監督官庁への報告が必要なものとしているため、監督官庁への報告の必要が無い事案については保安トラブル(保安事故には該当しないが保安事故に至る可能性があったと判断した事案)として管理していますが、国内と海外では監督官庁への報告の必要性の基準が異なるため、海外で発生した比較的大きな保安事案がトラブルとしてカウントされ、低減目標の対象となっていませんでした。そのため2023年からは保安トラブルもこの評価法によるランク分類を適用し、2025年からはA、B、Cランクに分類される保安トラブルも目標に追加し、発生ゼロを目指しています。