製品のはてな?
〈セプトン®〉
熱可塑性エラストマー〈セプトン®〉はどうしてゴムとプラスチック両方の特長をもってるの?
ゴムとプラスチックって全く別のものだと思うんですけど?
まずはゴムの分子構造から見ていきましょう。伸びたら元に戻らない原料ゴムは、図1のように分子が鎖状となって絡み合っているだけの状態です。これに力を加えて伸ばしたとしても、伸びっぱなしで戻ってきません。伸びて戻るという「弾性」をもたせるには、鎖状の分子同士を点で止めておくことが必要となります。そこで、伸び縮みする製品ゴム(いわゆるゴム)には、図2のような架橋点という点を作ってやるんです。ここには硫黄が使われることが多いんですよ。
図1 伸び縮みのない ゴムの分子構造
図2 弾性を持つ ゴムの分子構造
〈セプトン®〉の構造はどうなっているんですか?
図3のような分子構造をしています。ゴムの「弾性」をもつブロックに、架橋点として熱可塑性のプラスチック(ポリスチレン)のブロックが、連続して組み合わさっています。ですから全体としてみると、両方の特長を併せもつことになります。
図3 〈セプトン®〉の分子構造
〈セプトン®〉のどこにクラレの技術が生かされているのですか?
〈セプトン®〉はクラレの独自技術で事業化したものです。〈セプトン®〉のゴム性質をもつブロックは主にイソプレンなんですが、ポリマーといってすごい数がつながっているんです。クラレでは、このイソプレンに水素添加しています。このノウハウはとても高度で世界的にも数社しかない技術なんですよ。
どうしてわざわざ水素を添加するんですか?
イソプレンそのものは不安定な分子構造をしているんです。図4のようにイソプレンのポリマーには炭素(C)が5つあるのですが、その中に2重結合という不飽和結合が含まれています。この部分は他の物質と反応したがり、熱に対しても弱いんですね。そこでクラレでは、イソプレンに水素を添加して安定化させてやったのです。これにより、〈セプトン®〉は耐熱性・耐候性が優れ、広い分野でゴム性能を発揮できるのです。
なるほど。〈セプトン®〉に加えて、同じ熱可塑性エラストマーの〈ハイブラー®〉も好調なようですが。
ええ、両方とも需要が拡大しているんです。<セプトン>はゴム代替やプラスチック改質剤として需要が伸びています。そして、これらの需要拡大に対応するために、2002年9月から米国でも生産を始めています。〈ハイブラー®〉はポリプロピレンとブレンドすることによって、軟質の塩化ビニルに近い性質を発揮します。透明で、しかも可塑剤を加えなくても柔軟なことが特長です。安全性が高く、食品包装材やメディカル関連用途への採用が進み、需要が大幅に拡大しているんです。
※〈セプトン®〉、〈ハイブラー®〉はクラレの商標です