液晶ポリマーフィルムを絶縁層に用いた銅張積層板「エスパネックス Lシリーズ」開発
新日鐵化学株式会社(社長:大和屋隆喜)は、電子材料事業分野における主力商品として、携帯電話、液晶ディスプレイその他の回路基板材料向けに、無接着剤FPC用銅張積層板(Copper-Clad Laminate: CCL)「商品名:エスパネックス」を生産・販売していますが、このほど、株式会社クラレ(社長:和久井康明)の液晶ポリマー(LCP)フィルム(商品名:<ベクスター>)を使用した、新しいタイプのCCL「エスパネックス Lシリーズ」を両社で共同開発いたしました。
「エスパネックス Lシリーズ」は、<ベクスター>を絶縁層に用いることで、優れた高周波領域での電気特性を実現するとともに、従来タイプと比較して、低吸水率・高寸法安定性、高熱伝導率等優れた特性を可能としたものです。
1. エスパネックス Lシリーズの特長
- (1) 電気特性
- 特に高周波領域での電気特性(低誘電率、低誘電損失)が優れており、フッ素系樹脂に近い特性を有する。高周波帯での電気特性は、5GHzで誘電率2.86(フッ素系樹脂:2.6)、誘電正接0.0022(フッ素系樹脂:0.002)
- (2) 吸水率
- 吸水率が従来のポリイミド系CCLに比べて1/7以下と極めて低いため、吸湿による寸法変化が非常に少ない。(従来ポリイミド系:28ppm/%RH、LCP:4ppm/%RH)
- (3) 高熱伝導率
- 従来のポリイミド系CCLと比較して、約2.5倍の熱伝導率を有し、放熱特性に優れる。
- (4) 高耐熱性
- 鉛フリーハンダリフローに要求される270℃以上の耐熱性を有する。また、吸湿による耐熱性の変化はない。
- (5) 耐薬品性
- 優れた耐薬品性を有する。
- (6) 寸法安定性
- 銅箔との積層に接着剤を使用しないため、優れた寸法安定性を有する。
- (7) 難燃性
- ハロゲンフリーで優れた難燃特性を達成(UL規格94VTM-0相当)。環境に優しい素材である。
2. 主な用途
- (1) 高周波回路用基板
- (2) 高周波ケーブル
- (3) 通信機器回路
- (4) パッケージ用基板その他
3. 市場展開
現在、将来性が有望視されているブルートゥース(次世代短距離無線通信規格)、非接触型ICカードなど、近距離通信回路や高周波回路基板、およびパッケージ用基材向けなどに積極的にサンプルワークを行い、需要の開拓を進めてまいります。平成13年度下期から出荷を開始し、平成14年度中に、1万m²/月の販売を目指します。
(ご参考1)
製品構成(標準品)
両面品
銅箔18μm フィルム50μm
(ご参考2)
新日鐵化学は、電子材料事業の順調な拡大にあわせて、平成14年末までに、無接着剤FPC用銅張積層板「エスパネックス」の生産能力を、現在の約2.5倍となる300万m²/年へ増強することを決定しており、現在すでに、先端材事業部木更津製造所において、建設工事が進められています。
一方、同事業分野へ向けた研究開発投資も積極的に行う計画としており、今回の新商品の開発もその一環であります。
今後とも電子材料事業を主力事業のひとつとして、さらに強化・育成していく方針であります。
(ご参考3)
液晶ポリマーフィルム<ベクスター>について
全芳香族ポリエステル系の液晶ポリマーを主原料としたフィルム。(株)クラレが独自のインフレーション製膜法により開発し、耐熱性、低吸水性、寸法安定性、優れた高周波特性を兼ね備えています。