サーマルリサイクル可能なFRP製マネキンの採用について
1. はじめに
マネキンメーカーの(株)七彩は、(株)クラレ、クラレトレーディング(株)と共同して、地球環境保護や循環型社会に適合した素材を、主力商品であるマネキンに適用するための研究開発を、2000年1月より進めてきました。それはFRP製品に使用する補強繊維をこれまでのグラスファイバー(GF)からビニロンファイバー(VF)に転換させることによってサーマルリサイクルを可能とするものです。このほど製品化の見通しが立ち、2001年1月発表の新作マネキンシリーズより採用の運びとなりました。併せて当マネキンは使用後、発電用ボイラーの熱源としてサーマルリサイクルされる事も決まり、ここに発表に至った次第です。
2. マネキン素材をめぐる現状
わが国のマネキンは、1950年代末に紙を主素材にした「ファイバー製」からグラスファイバーで補強されたFRP製に移行しました。このFRPはマネキンに求められる諸条件を満たす、極めて適正な素材としてその後世界的に定着しました。しかし、地球環境に馴染まず、リサイクルが不可能なグラスファイバーが1980年代後半頃から問題視され始め、特に今日ではマネキンの主たるユーザーである、百貨店を始めとした小売業界が、環境問題を念頭においたショップ展開を指向しつつあることから、マネキン業界もこうした変化に対応し、現状のFRPに変わるエコロジー対応マネキンが一部市場に出回り始めている現状です。
3. エコロジー素材採用における留意点とビニロンファイバー使用によるFRP製マネキンの評価
1950年代末、FRPのマネキンへの適用を業界に先駆けて成し遂げた七彩は、マネキン素材のエコロジー化を進めるために次の3点を留意し、約1年間、エコロジー素材と製法に関する情報収集及び検討を重ねてまいりました。その結果、グラスファイバーに替わるFRPの補強繊維として、ビニロンファイバーのマネキンへの適用が現行マネキンと同等の品質を保持し諸条件を充たす最善の選択肢であることが明らかとなりました。
- (1) 品質の保持
- 成型性、耐候性、対薬品性、強度、軽量性など、現行の素材の特性を踏まえた品質が保持される。
- (2) 技術の継承
- 精密かつ熟練した製法、技術が継承出来る。
- (3) 生産コストの維持
- 現行程度に生産コストを維持することが出来る。
4. エコロジー化を進めるためにサーマルリサイクルシステムを利用
ビニロンファイバーを使用することによりマネキンの焼却が可能となることから、資源の有効活用を進めるべく、素材(ビニロンファイバー)を提供している(株)クラレのサーマルリサイクルシステム(詳細はこちら)の利用を併せて検討してきました。その結果、補強繊維の変更以外に使用する塗料の選定、金属など焼却できない物質の除去方法などで改良を加えることにより、燃料としての活用が可能となります。この改良を加えたサーマルリサイクル仕様マネキンは使用後、(株)クラレ玉島工場(岡山県 倉敷市)の発電用ボイラーの燃料として活用されます。
5. サーマルリサイクルの進め方について
(1) サーマルリサイクルの対象となるマネキン
2001年以降生産される七彩自社開発のサーマルリサイクル仕様マネキン(従来のマネキンは対象外)
(2) 役割分担
- 七彩
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- 1, 廃棄対象マネキンの回収
- 2, リサイクル対象外マネキンの選別(*1)
- 3, 対応不可金属など焼却不可物質の除去(*2)
- 4, 玉島工場までの輸送
- *1 従来のマネキン及び一部対応不可能な塗料を用いたマネキン
- *2 金属類及び塩化ビニル製手先
- クラレ
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- 1, 使用済みマネキンの減容固形化
- 2, 熱源利用
尚、上記対象外のマネキン及び除去された物質については産業廃棄物として従来通り七彩の責任において廃棄します。
(3) リサイクルの流れ
(4) 回収開始時期
サーマルリサイクルマネキンが廃棄対象となった後
6. 今後の課題
- (1) 使用する金属類や塩化ビニルの削減、燃焼可能素材への代替
- (2) サーマルリサイクル対応不可能な塗料について、代替塗料の研究開発
- (3) リサイクルマネキンの輸送コストを軽減するためのコンパクト化
サーマルリサイクルを一層推進するため、今後も引続き上記課題の解決を図っていきます。
以上