担当役員メッセージ
クラレグループは、化学繊維レーヨンの工業化から始まり、「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」という使命のもと、社会的責任と独自技術の追求に邁進してきました。国産合成繊維第1号となるビニロンの事業化に際しては、「繊維の原料から手がけないと品質は良くならない」と一貫生産の重要性を認識し、多くの苦難を乗り越えて原料となるポバールの自社生産も実現させました。
このこだわりこそが、私たちクラレの原点であり、高シェア製品を生み出してきた所以です。その後も高分子化学・合成化学の独自技術をベースに繊維から化学へ業態を変え、「スペシャリティ化学企業」として、ビニルアセテート関連事業をはじめとする多くの世界シェアNo.1の事業・製品を創出してきました。
こうしたあゆみの中で、中期経営計画「PASSION 2026」では、新たな成長ドライバーを生み出す施策の一つとして、2022年1月にイノベーションネットワーキングセンターを設立しました。先行き不透明なVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代の中、グローバルかつグループ全体でつながり、顧客やパートナー企業との連携など、社内外のリソースを結びつけることによってイノベーションを加速するための仕組みづくりや風土醸成、人材開発をリードしていくことが、同センターのミッションです。顧客との協業、対話などをデジタル化して共有するほか、クラレグループが保有する技術や設備、多様な人材などといった総合力をグローバルに共有し活用するためのプラットフォームを整備し、イノベーションの創出を図ります。これまでの事業部制にはなかった新しい組織構造のため、企業風土に良い刺激を促す試金石にもなるのではないかと期待しています。
また、研究開発における「顧客視点からの開発」「サステナビリティに貢献する開発」「知的財産戦略の立案・推進」にも取り組みます。研究開発の中には、開発途上の技術がたくさんありますが、イノベーションネットワーキングセンターを介してマーケット情報やアンメットニーズを知ることで、新たな価値を提供する素材の開発につながるのではないかと考えています。「サステナビリティに貢献する開発」については、中・長期的な競争力獲得に向けたサステナビリティ関連の新素材・新技術の創出、社会的課題 (カーボンネットゼロ) 解決に向けたGHG削減技術・プロセスの創出をさらに進めていきます。
2022年1月に環境・エネルギー研究所を設立しており、バイオマス由来の新しい炭素材料についても積極的に開発を進める方針です。「知的財産戦略の立案・推進」については、2022年1月にIPマネジメントセンターを設立しました。IPマネジメントセンターは各事業部の知的財産戦略をサポートする横断的組織で、知的財産権のライセンス化を拡大して収益化を図るなど、知財を有効活用したグローバルな戦略を立案・推進してきました。2025年1月には当組織を知的財産センターに改組し、知的財産のさらなる戦略的活用と、事業競争力の強化・収益拡大を目指していきます。
私たちの最大のミッションは、新規事業の創出です。そのためには、顧客情報や量産設備の設計など、他部門との連携は極めて重要です。今回の取り組みを通じて、クラレグループ全体が「One Kuraray」としてより密に連携・協力できる体制を強化しミッションを果たすとともに、次代に向けたイノベーション創出に挑戦し続けたいと思います。
株式会社クラレ 常務執行役員 イノベーションネットワーキングセンター担当、
研究開発本部担当、知的財産センター担当
尾松俊宏